ニュースリリース

小児病棟の子どもたちを慰める海の音楽

作曲家チャド・キャノン氏が海洋環境保全をテーマに日本でコンサートツアーを行う

Chad Cannon in Kumamoto Univ. Hospital_20260626
Chad Cannon in Kumamoto Univ. Hospital_20260626
熊本大学病院の小児科病棟を慰問するチャド・キャノン氏。海をテーマにした自作の楽曲演奏とアニメーションで、入院している子供たちと家族、病院スタッフらを慰めた© 2026 by Intellectual Reserve, Inc. All rights reserved.
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作曲家・バイオリニストのチャド・キャノン(Chad Cannon)氏が初めて日本の土を踏んだのは2006年、末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師としてでした。当時、ハーバード大学で作曲を学んでいたキャノン氏はバイオリンを携えて来日し、九州と沖縄でキリストの福音を宣べ伝えました。
復学後、伝道中に触れた沖縄の音楽を研究するため再び来日し、2011年東日本大震災の際にはバイオリンの音色で被災者を慰めるボランティア活動を行いました。
その後、新進の作曲家としてハリウッド大作映画や人気ゲームの音楽を手がけ、2017年から2026年の今日まで、久石譲コンサートワールドツアーでジブリ音楽のオーケストレーションとチーフアレンジャーを担当しています。
また、広島原爆被爆者のドキュメンタリー映画「Paper Lanterns(灯籠流し)」の音楽を担当し、日系ブラジル人画家・大岩オスカール氏の絵画にインスパイアされた交響曲「The Dreams of a Sleeping World」で福島の原発事故を題材とするなど、日本との深い縁から生まれた数多くの楽曲を手掛けてきました。

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今年、キャノン氏は新たなプロジェクト「Music for the Ocean」に取り組んでいます。世界的にも希少なサンゴ礁※1の保全を訴えるため、自らダイバーのライセンスを取って世界各地の海に潜った体験から音楽を紡ぎ出し、コンサートツアーを行うというものです。これらの楽曲は、ホンジュラスのサンゴ保護活動を支援するために作曲されました。
2026年6月23日(火)夜、チャド・キャノン氏は Music for the Ocean 日本ツアーに先立って熊本入りし、その足で天草(あまくさ)へと向かいました。現地のダイブ・マスターを雇って天草の海に潜るためです。

今回の日本ツアーの皮切りとして、熊本では2つの子ども支援コンサートが企画されました。1つめは、熊本県立盲学校・聾学校・はばたき高等支援学校3校合同のコンサート(会場:熊本県立盲学校)、2つめは、熊本大学病院小児科病棟での慰問ミニコンサートです。いずれも、全国の視覚障がい児向けに教材の開発・寄贈を続けているNPO法人が企画しました。この法人の主宰者は、末日聖徒イエス・キリスト教会熊本ワード※2の会員です。

ところが熊本市では、梅雨前線の活発化と台風7号の接近により大雨警報と避難指示が発令され、コンサート当日(26日)の熊本市内の小中学校の休校が決まってしまいます。盲学校高等部には、全国高校総合文化祭の常連となっているアンサンブル部があり、生徒たちはキャノン氏との共演に向けて日々練習を積んできました。関係者一同、楽しみにしていただけに極めて残念な事態となりました。


6月26日(金)、熊本大学病院小児科病棟のコンサートは予定通り実施されました。ここは、重篤な病状の子どもたちが長期にわたり入院している、熊本県の小児医療の最前線です。コロナ以降も厳しい感染対策が続けられる中、キャノン氏の慰問コンサートは特例として受け入れられました。午後2時すぎ、病棟プレイルームには赤ちゃんから高校生までの入院患者と、院内で付添生活を続ける母親たち、病院スタッフ合わせて30人ほどが集まります。

コンサートでは、キャノン氏による海の映像とアニメーションが映し出され、世界の海に潜って感じたインスピレーションから創作した楽曲が次々に演奏されました。「子どもたちは最初、何が起きているのか分からない表情をしていましたが、だんだんと明るくなってきました。」(キャノン氏)子どもたちと同じフロアのすぐ目の前に立って、時に穏やかに、時にアップテンポに繰り広げられるバイオリン演奏に、聴衆みんなが心を喜ばせ、魅せられていくのが見て取れます。病棟スケジュールの合間に設けられた45分間の演奏は、厳しい治療と院内生活のストレスに耐えている親子の心を和らげ、癒しと元気を与える貴重な経験を提供しました。

キャノン氏は終演後も子どもたちと触れ合い、家族ごとの写真撮影にも応じて、心からの励ましを伝えました。その場にいた誰もが温かい愛を感じ、名残惜しそうに病室へと戻っていく姿を目にしたキャノン氏は、この機会に深く感謝していました。また彼は、今回果たせなかった熊本盲学校でのコンサートを必ずや近い将来に実現することを心に誓ったといいます。

「Music for the Ocean」2026コンサートは、翌27日に、末日聖徒イエス・キリスト教会の熊本ワード教会堂でも開催されました。教会のホールには午後5時過ぎから人々が集まり始め、開始時間の午後6時には県内外から200人近くが詰めかけ、ホールを埋め尽くしました。舞台にはスクリーンと8本のスタンドライトが設置され、会場の照明が落ちると、舞台は青い照明で人々を海の中へと誘います。


このコンサートは、音楽と映像、照明デザイン、海洋科学プレゼンテーションを融合したユニークな催しです。背後のスクリーンには海中のサンゴや魚の映像、多彩なアニメーションが映し出され、バイオリンとピアノから繰り出される豊かな音楽と呼応します。

Chad-Cannon-Concert_Sea-of-Amakusa-in-Kumamoto-prefecture
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コンサートに先立ってキャノン氏は、熊本県天草市の海にダイブした。そのとき撮影した映像をバックに、天草で作曲した楽曲が演奏された。この曲に歌詞を付けた地元の田代志帆さんにより、「天草の海の物語」と題して歌われた© 2026 by Intellectual Reserve, Inc. All rights reserved.
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キャノン氏はその場で、数日前、天草の海に潜って撮影したサンゴの様子と、そこで得たインスピレーションから作った新曲を披露しました。この曲に、熊本ワードの田代志帆(たしろ・しほ)さんが歌詞を付け、「天草の海の物語」と題して歌いました。「音楽から、ずっと生きてきた海の生物がこれからも続くようにと願う気持ちを感じて、祈りの気持ちも込めました。」(田代さん)

「このままお別れするのは寂しい」と演奏されたアンコール曲は波間を漂うカメ。ゆったりとした音楽にキャノン氏は「これはララバイ(子守歌)ですね」と微笑みます。
コンサート後、観客からは「今まで聞いたことがないバイオリンの音色を聞きたくて、とても楽しみにしていました」との声が聞かれ、談笑の輪が広がり、和やかなひと時が流れました。

熊本以降、日本ツアーは沖縄、福岡、東京、山口、京都、愛知を巡ります。それぞれの地域で地元の人々や子どもたち、音楽家、海洋研究者とのコラボレーションが予定されています。キャノン氏はツアーと共に日本各地の海を訪れ、地域の文化やダイビング体験、海中録音などからインスピレーションを得た新たな楽曲を制作しつつ、海洋環境保全の大切さを訴えていきます。◆



※1 サンゴ礁は海面のわずか0.2%未満しかないにもかかわらず、そこに全海洋生物の25 %以上が生息していて、産卵や魚たちの隠れ場所となっている。また天然の防波堤となり、高い波のエネルギーを最大97%減らし、台風や津波から沿岸の街を守っている。さらにサンゴの骨格を作る過程で二酸化炭素(CO2)の循環にもかかわっていて、人の生活にも多く関係している。またサンゴは音を発する。元気なサンゴと弱ったサンゴの音は違う。近年の海水温上昇などによる環境ストレスで、サンゴの体内に栄養を送るプランクトン「褐虫藻」が抜けると、白化現象を起こして死滅したサンゴ礁となる……コンサートでは、こうした様々な海洋生物学のトピックが紹介された

※2 末日聖徒イエス・キリスト教会の地理上の管轄区分を表す単位。訳すなら「教区」