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「おばあさんの名前を知っていますか?」─神奈川県藤沢市で開催された家族歴史フェア

 

2018年は全国数か所で家族歴史フェアが開催された。これは,先祖に心を向けるという聖書の教え*1に基づいて末日聖徒イエス・キリスト教会が推奨する、「ファミリーヒストリー探求」についての様々なノウハウを展示する催しである。

*1─旧約聖書 マラキ書4:6参照

11月24日(土)、末日聖徒イエス・キリスト教会の藤沢ステーク*2センターで家族歴史フェアが開催された。藤沢では今年で2年目となる家族歴史フェア。より多くの人に気軽に来場してもらおうと、喫茶コーナーや健康相談コーナー、アロマハンドマッサージや整体のコーナーも準備された。とくに昨年と違う所は、宣教師が4つのブースを担当し、来場者のガイド役も務めたことだ。日本東京南伝道部のワーニック伝道部会長夫妻も出席し、藤沢ステークで働く合計30名の宣教師がいきいきとこのフェアを盛り立てた。来場者の中には、「おばあさんの名前を知っていますか?」「知りません。でも関心があります」とフェア直前に宣教師と交わした会話がきっかけで、そのまま教会に足を運んでくれた人もいたという。

*2─ステークとは天幕を張るための杭を意味し,教会では,近隣の幾つかの教会が集まった単位をステークと呼ぶ。藤沢ステークは,神奈川県藤沢市を中心とする7つの教会の集まりである。

            

開会行事の後、テーマムービー「ひいお祖母ちゃんからのたすき」が上映された。第二次大戦末期,ひめゆり学徒の一員として沖縄戦を生き残った仲里正子さん(91歳)がひ孫に受け継ぐ人生経験を描いたドキュメンタリーである。次いで厚木の教会に集う遠藤律子さんが「ひいおじいちゃんは戦争に行った」と題する講演を行った。日露戦争の最中に書き残したという出征日記――敵国の道路を見て「さすがは文明国なり」と称賛し、「敵が降伏してきたら殺すか殺さざるか」の仲間からの問いに「我は殺さず」と答えた曾祖父。一度も会ったこともない曾祖父への親愛と尊敬の思いを募らせ、時に感極まる曾孫。記録が先祖と子孫の心を結びつける実際を目の当たりにし、会場は温かい思いに包まれた。

        

その後、宣教師が来場者をグループ毎に「家族歴史ビデオコーナー」「私の家族歴史作成コーナー」「宣教師の家族歴史コーナー」「家族歴史センター」「福音パネル展示」「系図展示・市役所戸籍申請体験」の6つのブースに順次案内した。

「私の家族歴史作成コーナー」では、来場者がファミリーツリーのうちわに先祖の名前を書く体験をした。お菓子とハーブティが用意され、くつろいだ雰囲気の中で作業に取りかかってみるが、多くの人が祖父母の欄で手が止まってしまう。顔は知っていても名前がなかなか出てこない。『日本人は先祖に強い関心を持っている』と想像していたブラジル出身の長老は、「特に若い人が祖父母の名前を知らないことに驚きました」と語る。それでも家族や先祖への思いで話は弾み、タブレット端末から紹介される宣教師のファミリーツリーを見ながら、共に楽しい時を過ごした。

このフェアに先立ち、藤沢ステークに赴任している宣教師たちのリーダーは家族歴史を発表したい人を募ったという。「宣教師の家族歴史コーナー」を担当した5人の宣教師は、自身のファミリーツリーをスライドで紹介した。日系三世の木村姉妹*3は、第二次世界大戦後の混乱の中でブラジルに渡った祖父について証をした。45日間の航海の末にサンパウロに辿り着くと、朝5時から暗くなるまで無賃金で働くという過酷な生活が何年も続いた。当初は5年間働いて母国に戻るはずだったが、紆余曲折の中を忍耐して勤勉に働き、結婚をし、家族を養ってきた。「経済的に本当に難しかったけれど、祖父は父に教育を受けさせてくれました。父も私に教育を受けさせてくれます。心から感謝しています。」歴史で学んだ出来事が現実のこととして鮮やかに迫ってくる話に、人々は真剣に聞き入った。

*3─教会では,すべての人が神の子供たちであるとの教えから,男性を兄弟(Brother),女性を姉妹(Sister)と呼称する。特に,女性の宣教師を姉妹(例えば,木村姉妹=Sister Kimura)と呼ぶ。男性の宣教師を,その実年齢にかかわらず長老(Elder)と呼ぶ。

ウォーストローム姉妹の高祖父はスウェーデンで17歳の時に改宗し、後に開拓者として米国ユタ州に移住した。これまで両親から先祖の話を何度か聞かされたが、もっと知りたいとは思わなかった。しかし、今回の発表のため、教会が提供するオンライン系図サイト『ファミリーサーチ』から他の家族が書いた記録を調べてみて、高祖父が家族や友人に福音を紹介して改宗に導いたこと、高祖父から始まり曾祖父、祖父、父の全員が宣教師として奉仕したことを初めて知る。彼女の,次世代としての自覚と決意に満ちた表情――その姿に先祖が重なって見えた。

      

「家族歴史センター」の部屋では、藤沢の教会に集う一戸さんがパソコンの画面から,『ファミリーサーチ』を使ったファミリーツリー作成の入力の仕方を説明した。何度もうなずきながら、熱心に耳を傾ける来訪者の姿も見られる。部屋には4家族の家系図が掲示されており、39代続く家系図を見て「すごいなあ」の声も漏れ聞こえる。終始穏やかで、和気あいあいとした心地よい雰囲気が部屋を満たした。

「系図展示・市役所戸籍申請体験」は,藤沢ステークファミリーサーチ伝道委員の渡辺夫妻が担当した。戸籍取得の方法を伝えると共に、戸籍謄本の読み方など個別相談にも応じた。壁には家系図の他にも、ふとしたきっかけで作り始め、400名の教会員がつながったという関連図が掲示され、会員の注目を集めた。「三世、四世の世代になると家系図はさらにつながって、真に皆が兄弟姉妹ということになると思います」と渡辺さんは語る。

    

最後に藤沢ステーク会長の渡邊幸由さんが,「先祖の探求はDISCOVER百済」のテーマで、先祖の探求と共に百済の歴史や文化そのものを理解していった経緯を話した。「来てよかった」「これなら友人を呼びたい」そう満足して帰宅する人が多かった今回のフェア。藤沢ステークでは今後もこのフェアを継続していく。

書式ガイドの注釈:末日聖徒イエス・キリスト教会に関する記事で,教会の名称を最初に引用する際には,正式名称を使うようお願いいたします。教会の名称の引用に関する詳しい情報は,こちらへ: 書式ガイド書式ガイド.