「おそらくわたしたちは霊的に自由な世代で、宗教的なことも自分自身で決めなければ気がすまないのでしょう」と最近、ユタ州サウスジョーダンで高校を卒業したマッケイリー・カドワースは語った。大学に入ると教会に行くのをやめる人が多く、そそのまま戻って来ない人もいる。
カドワースは、1990年代半ばから2000年代初期に生まれた人を指すポスト・ミレニアル世代または「Z世代」と呼ばれる世代の1人である。この世代は現在、アメリカ人口の4分の1を占める。
Temple Square is always beautiful in the springtime. Gardeners work to prepare the ground for General Conference. © 2012 Intellectual Reserve, Inc. All rights reserved. | 1 / 2 |
モルモンでは責任の取れる年齢と考えられている8歳でバプテスマを受け、末日聖徒イエス・キリスト教会の会員となったカドワースは3人兄弟の末っ子である。ユースの頃は家族と一緒に教会に出席していた。18歳になった今、彼女は自分の自由意思を行使し、日曜日は教会に行かないと決めた。
自分の子どもが群れから離れると、多くのZ世代の親たちは自分たちの子育て方法が間違っていたのではと疑問を抱く。また教会から離れることが、反抗期の一時的なものであるようにと願う。箴言には「子をその行くべき道に従って教えよ、そうすれば年老いても、それを離れることがない。」(箴言22:6)とある。
2015年11月に発表されたピュー研究によると、アメリカの約4分の1の成人は定期的に教会に行っていないという結果が発表され、その数は2007年よりも16%増加している。不活発な若年成人を含め「ナンズ(nones)」(いずれの宗教団体にも属さない人)と呼ばれる多くの人々が、自分は霊的であると考えている。「魂や霊は信じています。何か見えないものが存在すると信じています」とカドワースは説明する。
「Z世代」
ノースカロライナ州シャーロットにあるメックレンバーグ・コミュニティ・チャーチの主任牧師であるジェームス・エメリー・ホワイトは、自身の新刊書籍「Z世代と会う:キリスト教後の新世界を理解し手を差し伸べる(Meet Generation Z: Understanding and Reaching the New Post-Christian World)」の中でこの世代について語っている。ホワイト牧師は、Z世代は自分の人生を使って世の中を良くしたいという強い望みは持っているものの、価値観の中心には個人の自由を置いているという。
Z世代の若者は1日のほとんどをインターネットにつながって過ごすものの、多くの宗教団体はテクノロジーの知識が豊富ではない。
「ミレニアル世代には、ソーシャルメディアのコミュニティがあるので、教会に行く必要はないと考える人がいます。世界中の人とつながり、同じ事柄に興味を持つ人を見つけることができますから」とカドワースは語った。
カドワース自身は学校や仕事先で友人に会う方が好きだといい、「ネット上の人と近づこうとは思いません。安全だとは思えないからです」と述べる。
Z世代の78%はまだ神の存在を信じており、半分に満たないものの41%は毎週教会に行っているとホワイト牧師は報告する。一方で宗教指導者を模範とみなす者は8%に過ぎないという。
「組織宗教は人を組織の中に入れ、その組織は変化せず、ずっと同じままです」とカドワースは語った。しかし、カドワースや他の若年成人は、日曜日に教会へ行って行う礼拝とは異なった礼拝方法を見つけている。カドワースが考える癒しには、読書、執筆、音楽を聴くことなどが含まれる。
「教会組織を、自分を制限するものととらえるのではなく、その良い面、自由を得させるものという観点でとらえると良いと思います」と中央若い女性会長会第二顧問のニール・F・マリオット姉妹は説明する。
マリオット姉妹は「信号機を守らなければならないという厳しい法律を考えてください。この交通規則は動かしようのないもので、わたしは交通規則があることを嬉しく思います。その規則のおかげで、危険から守られ、他の車と衝突することを心配する必要もなくなります。同様に、霊的なガイドラインまたは教会という組織は、わたしたちが毎日直面するこの世的または肉欲的なガイドラインに従ったときに招くことの多い不幸な結果を避ける、あるいは少なくとも軽減するのを助けることができるとわたしは信じています」と続けた。
フェイスブックの創設者でありCEOであるマーク・ザッカーバーグは、最近シカゴで開催された集会で、ソーシャルメディアのプラットフォームと教会はコミュニティを作るという意味で似ているといい、「教会に行く人々は慈善活動でボランティアとして働くことが多くあります。それは彼らが信心深いからではなく、コミュニティの一員だからです」と述べた。
バーチャルなコミュニティがあるにもかかわらず、子どもたちがほとんどのことを学ぶのは家庭の中であり、カドワース自身も道徳や高潔については家庭で学んだと語っている。
聖職者の反応
過去3年間、オハイオ州ガンビアにあるケニオンカレッジのケニオンインスティテュートで「壁の向こうに(Beyond Walls)」と名付けられたカンファレンスが開催され、霊的な事柄を執筆することに関して話し合われた。多数の宗教団体の聖職者および宗教書の著者が7月、静かなキャンパスに1週間集まり、論説記事、ブログ、エッセーの執筆スキルを磨き、宗教的メッセージをより広範囲に広めるためにソーシャルメディアを利用したオンライン集会について学んだ。
「これは21世紀の新しい姿です」とコネチカット州ニューロンドンの聖ヤコブ聖公会の教区牧師ランジット・マシューズは述べた。マシューズは自分の説教をブログ、ビデオブログなどのソーシャルメディアで分かち合う方法を学ぶためにこのカンファレンスに参加した。「わたしは38歳のインド系アメリカ人聖公会牧師としてはユニークな幅広い人生経験と職業経験を持っていると思いますので、それをもっと多くの人に分かち合いたいと考えています。ソーシャルメディアを使えばそれができるでしょう」とマシューズは付け加えた。
「わたしたちは文化と結びつけようとしていません。現在は、キリスト教文化が終わった後の時代です」とメリーランド州ローレルの聖フィリップ教区の聖公会牧師であるシーラ・マクジルトンは述べた。マクジルトンは今回のカンファレンスで行われたソーシャルメディアワークショップで、自分自身のウェブサイトを創設し、そこにビデオを投稿する方法を学んだ。「組織としての教会は現在、苦境に立たされています。日曜日には、教会よりスターバックスに行く人の方が多くなっています」とマクジルトンは語った。
近々行う活動への出席者を増やすため、マクジルトンは新しいホームページを作り、情報をフェイスブックに投稿するためにボランティアの手を借りている。マクジルトンはブログを維持し、教区の会員にメールを週1回送っている。メールの開封率は高いという。
イリノイ州ウィネトカのウィネトカ・コベナント教会のメリー・ローズは「ソーシャルメディアは教会が宣伝に使う方法として非常に重要です」と述べた。ローズは自分の教会のホームページの更新を担当しており、Beyond Wallsカンファレンスに参加して、自分の400メートルのクリスチャンの集会に新しい世代を取り込む方法を学びに来た。ローズは、若い人々はソーシャルメディアを使う近所の巨大教会に引き寄せられているといい、「ソーシャルメディアは、若者たちを誘い、メッセージを伝えることに成功しています。そういったテクノロジーなしに努力しているわたしたちとは比べものになりません」と語った。
数年前、アメリカの主要な複数の教会が共同で、信仰を持つという価値観を広めようと「フェイス・カウンツ (Faith Counts、「信仰は重要」の意味)」という組織を設立、分かち合うことのできるコンテンツをホームページやソーシャルメディアのチャンネルに書き込んだ。
カトリックのフランシスコ法王でさえ、定期的にツイートでメッセージを発信するという。
When we are feeling sad, when it feels like everything is going wrong, we should remember: “God loves me. God never abandons me”.
— Pope Francis (@Pontifex) 2017年8月22日
さらに、モルモンの幹部指導者もテクノロジーを用いて、個人的に会員に仕えることと宗教的集会の必要性を高めようとしているが、集会をなくしてしまう考えはない。大管長会と十二使徒定員会のメンバーはフェイスブック、ツイッター、インスタグラムにメッセージを投稿し、世界中にメッセージが届くように努力している。
また、末日聖徒は教会の公式ホームページに掲載されるコンテンツをシェアすることが奨励されている。
「正義と真理に満たされたメッセージ、つまり正しく、人々を啓発する内容で、称賛に価すべきメッセージを世界に広げるようにと強く勧めます」と十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は2014年8月のブリガム・ヤング大学(BYU)において聴衆に語った。
Susan and I are excited to speak in the worldwide devotional on September 10. Please come with hearts ready to receive. We love you! pic.twitter.com/K48hawnfN8
— David A. Bednar (@BednarDavidA) 2017年8月17日
「わたしたちは、義にかなった方法でテクノロジーを使うことを若者に教えるためにできるすべてのことを行うべきです。また、テクノロジーの不義な使用とその使用に伴う危険についても警告し予防しなければなりません」と十二使徒定員会のゲリー・E・スティーブンソン長老はBYUで5月に開催された女性の大会にて話した。
カドワースはソーシャルメディアを利用する宗教指導者には本当の姿を見せて欲しいという。「無理して若者言葉を使うことがあります。わたしたちが自分たちとは異なる人間であると思っている節があります。ただ、わたしたちはただ指導者に友人であって欲しいだけなのです」と述べた。
「わたしたち親や祖父母が子どもの心をつかむ一番の方法は、キリストの模範に従い、ただ彼らを愛することです」とマリオット姉妹は語った。