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奉仕を通して,他者に目を向けるようになった受刑者たち

教会のファミリーサーチ索引作成プログラム,刑務所で成功

ユタ州ケイン郡刑務所のデビッドは意外にも心癒やされるチームに入った。家族歴史索引作成のチームである。「索引作成ではスポーツ行事のときように受刑者はチームワークを発揮します。このような環境にいるのは本当にすばらしいことです」とデビッドは語った。「索引作成をしているときは,受刑者同士が前向きに意志の疎通を図っています。」

索引作成の課程ではFamilySearch ソフトウェアを使って古い記録の画像を閲覧する。そのためボランティアは出生,結婚,死亡,国勢調査,渡航記録やその他の資料などの様々な記録をシステムに入力する必要がある。その後,データは末日聖徒イエス・キリスト教会内の一組織であるFamilySearch によって検索可能な索引にまとめられ, FamilySearch.orgで公開され,一般の人が利用できるようになる。

「索引作成のおかげで,より多くの人々がかつてないほど迅速に先祖を見つけています」とファミリーサーチ索引作成ボランティアを管理するマイク・ジャドソンは語る。「先祖が簡単に見つかるようになったことで,日々何千もの人々が自分は何者であり,どこから来たのかさらに理解できるようになりました。」

教会が運営する家族歴史索引作成プログラムに自主的に参加する受刑者は,ケイン郡以外にもユタ州,アイダホ州,アリゾナ州にほぼ2,300人いる。ユタ州立矯正施設内の索引作成センターは週7日,1日3交代制で運営され,寄贈されたコンピューター機器と地元の教会からのボランティアアドバイザーがセンターを支えている。

州の施設や郡の刑務所におけるこのプログラムの指導方法は多様である。ほとんどの施設では奉仕宣教師が受刑者の指導に当たるが,カナブに収容されている受刑者は自分たちでプログラムを管理し,教会からは一人の指導者が時折指導するだけである。それぞれの作業場では,教会がコンピューターとソフトウェアを提供している。受刑者たちはファイアウォールによってインターネットへの直接のアクセスが禁じられているが,マイクロフィルムやフラッシュドライブを使って探求作業をしている。

2014年には,索引作成に関わる受刑者たちは700万件以上の名前を処理したが,そのうちのほぼ100万件はケイン郡刑務所のグループが8月に1か月で処理したものである。サンフアン郡刑務所ではさらに150万件の名前を11月に1か月で終えた。

受刑者用索引作成プログラムに参加している刑務所は2012年には9か所しかなかったが,今では32か所にまで拡大した。その中にはユタ郡センターやユタ州ポイント・オブ・ザ・マウンテンとガニソンの2か所にある州全体を管轄する施設も含まれる。受刑者のボランティア数は2013年から650ほどに増えた。

「索引作成プログラムは受刑者にとって非常に有益です」とユタ州パークシティのサミット郡司法センター管区長のケン・ジョーンズは説明した。「受刑者に自分の能力を上回る大きな目標を与えるものは刑務所全体の環境を改善します。わたしたちは管理するための手段として,受刑者には作業に活発に携わり続けてもらいたいと思っています。これはわたしたち皆にとって,お互いにメリットがあります。」

州全体を統括する刑務所管理職員も同意する。教会家族歴史部が進める同プログラムのボランティアコーディネーターであるバリー・ギャメルは次のように語る。「受刑者は宗教に関係なく招待されており,共同体意識を持ち,ともに作業し,全体的に対立感が少なくなっているように見受けられます。個人としては,自分の索引作成の目標に到達するにつれて ,受刑者はコンピューターのスキルを上げ,自信を深めています。」

ユタ州立刑務所でアレンが最初に家族歴史索引作成プロジェクトに参加しようと決めたのは「椅子が柔らかかったからだ。刑務所内で椅子にクッションがあるのはそこだけだった」と言う。しかし,間もなく彼はコンピューターを使ってできる,興味をかきたて,心を高めてくれる活動を発見したのである。現在彼は毎週700人の名前を索引作成する目標を達成している。

パークシティ刑務所のジョージは他の受刑者たちに同意しながら,索引作成に参加することについて説明した。「わたしたちにとってこれはお返しをするための方法なんです。壁に囲まれて刑期を務めるこんな所にいても,塀の外でできることをし,他の人を助けているような気がします。」

サミット郡のメイも家族歴史をしている祖母とのつながりを感じている。「わたしはコンピューターで作業するのが好きです。」さらに,「自分が索引を作成した人の情報が誰かの役に立つことや,もしかしたら自分の先祖さえも探すことができるかもしれないと考えると,慰めを感じます」と述べた。

索引作成のための事実を集めることは,もう一人のサミット郡受刑者であるリリーの冒険心をくすぐっている。「わたしはいつも歴史に興味を持っていました」と彼女は言う。「人の人生に変化をもたらす事実を知るのが好きです。そして,起こったかもしれない細かなことについて想像してみるのです。この奉仕をさせてもらい,自分が誰かを助けていると知って,すばらしい機会だと感じています。」

記録の中には読みづらいものもあるが,受刑者のトレントは次のように打ち明けた。「静かに耳を傾けていると,分かるんです。そのことについて考え,少しお祈りすると,知りたいことが浮かんで来るんです。それはとても不思議なことです。僕は索引作成をしていることで,いろいろな面で祝福されていると本当に感じます。」

索引作成に加えて,ユタ州の刑務所の受刑者たちは自分が申請したマイクロフィルムを使って自らの家族探求をする機会がある。夫婦でワサッチ郡ユニットのディレクターを務めるウォルト・クーラムと妻のカレンは毎週探求のためのフィルムを刑務所に届けている。

「家族探求は受刑者たちに新たな視点を与えています」とウォルトは説明した。「受刑者の中には自分が知りもしなかった家族,例えば祖父母のような近親者を見つけることもあります。彼らはすべての情報をフォルダに集め,本にしてクリスマスプレゼントにする人や,別の方法で家族とつながることができる人もいます。」

ベルナルドは,家族歴史の探求から「自分の子供たちに伝えるべきもの」を得ることができた。「家族が家系を知るのは大切なことです。」入念な探求と,部族や政府当局者に手紙を書くことにより,アメリカ先住民の子孫である彼の一つの家族の血統は1397年のスペインにまでさかのぼることができた。

家族歴史プロジェクトに参加することは受刑者たちの益になるだけでなく,ボランティアにとっても著しい影響を与える。

「これらの参加者たちは150人の非常にユニークな個人であることがすぐに分かるでしょう」とウォルト・クーラムは述べた。「家族歴史の業を続けるにつれて,彼らが紳士であることが分かりますし,彼らの中に変化を見ることができます。誰かのために何かができるとき,受刑者たちの態度が本当に変わります。……そして,彼らに仕えながら,わたしたちも変わるのです。」

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