5月18日,末日聖徒イエス・キリスト教会一宮ワード*1にて,教会が定めた「全国奉仕の日」の一環として,不要になった書籍やCDを集め,人々への支援に変える活動「チャリボン」が行われた。
*1 ワードとは,地域の教会が管轄する一定の地理的範囲「教区」を意味する
不要な本を寄付することで,多様な活動団体を支援できるチャリボン
チャリボンとは,古本のリユース(再利用)を活用した,NPO,NGOなどのファンドレイジング(寄付集め)を支援するサービスである。運営する株式会社バリューブックス*2は,インターネットでの古本の買い取り,販売を手がけている。
読み終えた書籍や,不要になった音楽CD,DVD,ゲームソフトなどを寄付すると,バリューブックスが査定を行い,買い取り相当額が指定した団体に寄付される仕組みである。
支援先団体には,学びの場を広げる,平和な生活を守るなど,人々の生活を資する多くのNPO,NGOが名を連ねる。その中で一宮ワードが支援先として選んだのは,「セカンドハーベストジャパン」*3。品質に問題がないにもかかわらずさまざまな事情で廃棄されてしまう余剰食品を引き取り,児童養護施設の子どもたち,DV被害者のためのシェルター,生活困難者などの元に届ける活動を行う,日本初のフードバンクである。
チャリボン活動に先立ち,一宮ワードでは活動内容を記した2000枚のチラシを用意した。本を寄付することが日々の食事に困っている方々を助けることにつながるという趣旨を説明したチラシを2週間かけて友人,知人,近所の人々に配布した。フェイスブックやLINEなどのSNSも使用して拡散に努め,中には市議会委員にSNSでチラシを送った会員もいた。
*2 バリューブックスホームページ https://www.charibon.jp/
*3 セカンドハーベストジャパンホームページ http://2hj.org/
当日,礼拝堂には数百冊の書籍が積み上げられた
5月18日の当日は,9時から16時まで一宮ワードのホールを開放し,本やCDを募った。長時間の奉仕となるため1〜2時間ごとのシフト制を採用し,会員達が各自の都合に合わせて参加できるよう調整した。事前にチラシやSNSを活用した告知を徹底した甲斐あって,たくさんの本やCDがホールのテーブルに積み上げられた。
最終的に集まったのは書籍が635冊,CDが57枚。30名程度の教会員が参加し,会員でない方の参加が10名ほどあった。セカンドハーベストジャパンによれば,1冊の本を寄付することで,食に困っている方々の二食分を支援することができるということである。
活動に手ごたえを感じた一宮ワードの会員たち
今回,一宮ワードで初めてのチャリボンを行うきっかけを作った扶助協会*4会長の大野徳子(おおの のりこ)姉妹*5は,チャリボンが周りの人を巻き込むことのできる,取り組みやすい活動であると実感したという。
大野姉妹が実際にチャリボンのことで友人たちに声をかけると,自分もぜひ本を寄付したい,という友人がおり,姉妹は前日に本を引き取りに行った。「その家族の誰が本を出してくれたのか説明を聞いたときにびっくりしました。親だけでなく,その子供さんが実際に読んでいた本をチャリボンのために寄付してくださった。これは,家族として一緒に取り組めるいい奉仕だと実感しました」。さらに「新しい奉仕の方法を見つけたと思いました。とても取り組みやすい活動でした。あまり準備が必要なく,家にある必要のないものを提供することが誰かの役に立ちます。他の団体と協力して奉仕するというのが私にとって今までないことだったので,新しいと感じました」と大野姉妹はチャリボンを振り返る。
また,ともにチャリボンに関わった門脇静香(かどわき しずか)姉妹も「本を処分するなら古本屋というイメージが変わった」と言う。
教会員でないある家族が引っ越しをするため本の処分を考えていた。しかし大切な本だったため,売ることにためらいを感じていたところへチャリボンのお知らせがあり,「誰かのためになるのなら大事な本を寄付してもいい」と段ボール3箱分も持ってきてくれたという。そのエピソードから「意外とチャリティーに参加したいという人がいるんだなと感動しました」と活動の手ごたえを感じていた。
一宮ワードの松岡祐一(まつおか ゆういち)ビショップ*6はチャリボンを終えてこう語る。「ヘルピングハンズ*7の黄色いビブスを着た時,宣教師のネームタグをつけたときのような胸踊る嬉しい気持ちを感じました。この奉仕のために会員のSNS投稿やチラシを見た教会員でない方々が家族で教会に来られ,会員と一緒に奉仕されていました。チャリボンが終わった後,会員や友人の方々から『また絶対やりたい』『次も声をかけて欲しい』という要望をたくさんいただきました。私たちの教会が自信を持って地域の皆さんに提供できる,素晴らしい奉仕活動だと感じましたね。
賛美歌137番“今日われ善きことせしか”の歌詞の一部にある,
天の夢より覚め 善きこと行なえ
計り知れざる喜びあり 愛と義務の恵み
を感じたいのです。これからもっとSNSなどを使い,地域の方々を招き,福音の喜びを共有していきたいと思います。」
地域社会と連携して教会員が奉仕していくことは,末日聖徒イエス・キリスト教会が提唱しているミニスタリング*8のひとつの姿である。一宮ワードではこれからも地域の人々とともにこのような活動に取り組んでいきたいと考えている。
*4 扶助協会は、末日聖徒イエス・キリスト教会の18歳以上の女性会員で構成される世界最大(700万人以上)の女性団体。「慈愛はいつまでも絶えることはない」をモットーに,慈善奉仕など様々な活動を行う
*5 教会ではすべての人が神の子供たちであるとの教えから,男性を兄弟(Brother),女性を姉妹(Sister)と呼称する
*6 ビショップとは,地域の教会「ワード」の代表者。専任の聖職者ではなく無給のボランティアとして,教会に来る人々や宣教師を助ける
*7 モルモンヘルピングハンズ・プログラムは,末日聖徒イエス・キリスト教会の会員とその隣人たちが協力し合って地域奉仕を提供するもの。ロゴ入りの黄色いビブスがトレードマークである
*8 ミニスタリング(Ministering)とは,イエス・キリストが行ったように,人々の必要をよく見極めて一人一人に仕えること。キリストの弟子であるクリスチャンの奉仕の理念である