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さらに数万人のモルモン教徒,宣教師としての奉仕を選ぶ

女性の宣教師数が倍増,宣教師の召しを受ける段階とは

大勢の人でにぎわうライト家の居間。暖炉の上の飾り棚に置かれた大きな白い封筒は,ありふれた郵便物に見える。しかし,この封筒が届いたことを,皆が集まって喜んでいるのにはそれなりの理由がある。この封筒の中には,これから18か月の間,アリソン・ライト姉妹が神とイエス・キリストについて人々に教える業を果たすことになる任地が書かれているのだ。

「任地は,ただ主がわたしをどこで必要とされているかで決まります」と語るのは,4歳のころからアリーと呼ばれているアリソンだ。「確かに信仰が必要です。でも,自分がどこに召されるのかと思うと,わくわくして,待ち切れません。

ちょうど1年前,18歳のアリーはユタ州の高校3年生で,クロスカントリー,合唱団,生徒会など,様々な活動で忙しい毎日を送っていた。末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師になることについては考えていた。しかし,女性が宣教師となる年齢は21歳なので,数年後,その年齢に近づいたら決めようと思っていた。しかし,すべてが変わったのは,2012年10月,あの同じ居間に座っていたときだった。

教会の半期総大会の最初の部会で,トーマス・S・モンソン大管長が,若い男性は19歳ではなく18歳で伝道に出られること,また希望する若い女性は21歳ではなく19歳で宣教師に推薦されると発表するのを,驚きの目で見詰めていた。

「その後の5,6年間の計画は,その一瞬で完全に変わりました」とアリーは語る。「その機会が訪れたとき,心の中に『わたしは伝道に行く』という思いが自然にわいてきました。ほんとうに力強い経験でした。」

10月のその日に開かれた記者会見で,十二使徒定員会のジェフリー・R・ホランド長老は,末日聖徒の若い女性にとって,伝道に出ることは義務ではないと説明したうえで,「実際に伝道している女性たちは非常に成功しており,わたしたちは女性の宣教師の働きを喜んで歓迎します」と述べ,「個人的には,この変更によってさらに多くの若い女性が伝道の業に従事するようになることを心からうれしく思います」と語った。

そして,実際それは現実に起こっている。モンソン大管長の発表以来,女性の宣教師の数は2倍以上に増え,2012年9月には約8,000人だったのが,現在は1万9,000人を超えた。

教会の宣教師管理部の管理ディレクターとして,教会の宣教師の働きを管理する助けをしているデビッド・F・エバンズ長老は,女性の宣教師の劇的な増加は歓迎されていると語った。

「この教会の若い姉妹たちは,モンソン大管長が〔宣教師の年齢の変更について〕語るのを聞きました。大管長は,若い女性による伝道の奉仕の業は義務ではないが,教会として歓迎すると明確に述べました。そのようなすばらしいコメントがモンソン大管長の口から語られるのを聞き,教会の若い女性は伝道の業を,今計画できる実行可能な選択肢としてとらえていると考えられます。」

宣教師の年齢の引き下げと宣教師の新たな波

伝道に出ることのできる年齢の変更は,男女を問わず世界中いるモルモンの青少年の生活に影響を与えた。若い男性も女性もより若い年齢で伝道に出られるという機会を好機ととらえ,宣教師の数は8万人近くに増えた。アリーの通うユタ州サンディーの高校でも,同時期に卒業予定の多くの生徒が同じような影響を受けた。

「あの発表の後,大きな変化が感じられました」とアリーは語る。「みんなが準備し始め,興奮しています。自分もその仲間に入るのが待ち切れません。ほんとうにすごいことだと思います。」

さらに多くの宣教師が伝道の奉仕を選んだことによって,増加した宣教師に対応するために,教会の伝道部の指導体系が変更された。

姉妹宣教師の大幅な増加も含めた宣教師総数の増加を受けて,伝道部の新たな管理方法は適切であると思えました」とエバンズ長老は語った。

4月,教会は伝道部指導者評議会と姉妹訓練指導者という役割を新たに作った。姉妹訓練指導者は,自分が割り当てを受けた女性宣教師の訓練と生活全般の援助に責任を持ち,新たな伝道部指導者評議会において,ゾーン(伝道部内の地域)リーダーや伝道部会長夫妻,伝道部会長補佐とともに働く。

伝道部指導者評議会の会員は,「毎月集まって伝道部の必要について評議します」とエバンズ長老は説明する。「彼らは問題について話し合います。教会のほかのあらゆるレベルの評議会と同様に,信仰を同じくする男女がともに評議するとき,そうでない方法で行うよりもはるかに良い結果を得ています。」

伝道に備える

アリーはほとんど一瞬で伝道に出る決断をしたが,その準備は何年にもわたって知識と信仰を積み重ね,数か月かけて正式な段階を経て行ってきた。教会の会員は自発的に伝道に出たいと希望するが,それを実際に行うためには,地元の教会指導者から推薦を受け,その後に正式な「召し」を受けなければならない。伝道に出ることを望む会員は,以下のような幾つかの段階を踏まなければならない。

1)地元の集会所の指導者であるビショップと最初の面接を行い,霊的,情緒的,身体的,財政的な準備について話し合う。

2)オンラインの申請書で宣教師としての準備状況を記入する。その項目として,伝道に出るに当たっての申請者の希望や準備状況,言語能力,仕事の経験,教育,指導者経験,健康状態などが含まれる。

3)身体的に伝道する準備ができていることを確認するために,医師・歯科医師の診断を受ける。

4)ビショップとステーク会長(カトリックの司教管区に似た管理区域の指導者)と面接をし,両者から伝道に出るための推薦状を受ける。

アリーのステーク会長であるブレット・デイビスは,これから伝道に出ようとしている人々にアドバイスをするに当たって,すべての段階がきちんと終えられるように助けているが,もっと大切なのは,その段階を踏むときに神の助けを求めることであると語る。「御霊に従い,彼らに質問をする際にも御霊によって導かれるように,伝道に出ることが彼らにとって正しいことであるかどうかを確認するようにしています。」

宣教師になろうとしている人について,ビショップとステーク会長がそのまま進めても大丈夫だと感じるとき,ステーク会長が申請書をソルトレーク・シティーにある教会の宣教師管理部に送る。申請書は複数の人々によって審査され,ビザの必要性や情緒面身体面での健康問題など,宣教師の任地に影響を及ぼすあらゆる事柄が確認され,書き加えられる。

「伝道活動は身体的に非常に大変です」とアリーのビショップ,シェーン・ペースは語る。「健康上の制限がある場合,通常の方法で伝道することは難しくなります。しかし,そのような制限があっても,通常の専任宣教師の奉仕以外にも,若い男性や女性が奉仕する方法はあります。」

宣教師の赴任先を決める

宣教師管理部の職員は,毎週,申請用紙に目を通した後,受理した申請用紙を数百枚ごとのグループに分ける。一人の職員がグループ内の宣教師一人一人の提出書類を確認する。週の終わりに,その職員は十二使徒定員会の一人と任地決定のための集会において,これから召される宣教師の書類を表示する。すべての情報がスクリーンに映し出され,使徒に提示される。そして使徒は神の導きを求めて,各宣教師を世界各地の405の伝道部の一つに割り当てる。その後,伝道の召しは教会の大管長の承認を受け,大管長から伝道の召しの手紙が送られる。

2010年,教会の七十人会長会の一員であるロナルド・A・ラズバンド長老が,大管長会のヘンリー・B・アイリング管長(当時は十二使徒定員会会員)が伝道の割り当てを決める様子を見学したときのことについて次のように語っている。

「宣教師を割り当てる作業が始まり,割り当てを受ける宣教師の写真がスクリーンの一つに表示されました。写真が映し出される度に,まるでその宣教師が同じ部屋にいるような気持ちになりました。するとアイリング長老は,優しく,愛情のこもった声でスクリーン上の宣教師にあいさつするのです。『おはようございます,リアー長老。おはようございます,ヤン姉妹。お元気ですか。』

長老は,宣教師がどこで伝道を終えることになるかを思い巡らすのが好きだと話してくれました。宣教師をどこに割り当てるべきか分かりやすくなると言うのです。それからアイリング長老は,宣教師についてのビショップとステーク会長の所見や,医療記録,その他の事項を検討しました。

長老は次に別のコンピュータースクリーンを見せてくれました。そこには世界各地の地域と伝道部が表示されていました。そして最後に,アイリング長老は御霊に促されるままに宣教師の任地を決定するのです。

ほかの十二使徒の作業の様子からも,わたしは,主の使徒が通常これと同じ方法で毎週数多くの宣教師を世界各地での奉仕に割り当てていることを知りました。」

エバンズ長老は2012年以来伝道に出る宣教師の数が増加しても,使徒と宣教師管理部のスタッフは,伝道の召しのプロセスが変わらないように尽力してきたと述べた。

「十二使徒定員会の〔会員〕は今もすべての宣教師の一人一人の召しを決定しています。決定すべき召しの数の増加に見合うように,使徒と宣教師管理部は毎週開く召しを決定する集会を増やしました」とエバンズ長老は語った。

強い気持ちや思いなど簡潔で短い印象という形で,だれでも神から導きを受けられると,教会員は信じている。指導者は,自分が導く人々のために神の導きを求めるために召されている。アリーは,主がすべての人に導きを与えることがおできになること,また神が教会の使徒を実際に導いておられることを信じているので,自分にとって最もふさわしい伝道部に召されるという確信を持っていると語った。

「自分がほんとうに必要のある所に行くと思うと,受け入れるのを難しいと思ったことは一度もありません」とアリーは語る。「人が決めたことではないと知っていますし,神の計画があることを信じていますから。」

アリーは,人々に教会や救い主について教える際にも,人知を超えた神の偉大な計画を信じ,それに頼ることになるだろう。

「これは真実です。たとえ難しくても,理解できないことがあっても,また疑いがあるときでさえも,この福音はわたしを幸せにしてくれるし,平安を感じさせてくれると知っています」とアリーは語る。

結局のところ,それこそ,アリーが18か月の間見知らぬ人にイエス・キリストの福音について話したいと願う理由なのだ。

「福音はほんとうに多くの喜びと幸福をわたしの生活にもたらしてくれます。そして,わたしはそれを人々と分かち合いたいのです」とアリーは語る。「救い主はわたしのために多くを行ってくださったと感じます。そしてわたしにできるのはただ,わたしの人生の1年半を救い主にささげることです。」

 

伝道の召しの手紙を開けるとき

ライト家には集まれる人は全員がそろい,集まれない人は映像や電話で加わっていた。アリーは興奮した面持ちで封筒を開け,読み上げる。

「親愛なるライト姉妹,あなたは末日聖徒イエス・キリスト教会の宣教師として召されました。あなたはデンマーク・コペンハーゲン伝道部で奉仕するように召されました。」

部屋は興奮に包まれ,全員が手をたたき,歓喜の声を上げる。そしてアリーは笑顔で,隣に立っている両親に抱きつく。笑顔のまま,宣教師の訓練がいつ,どこで始まるかなど,手紙の続きを読み上げ,それが終わると,彼女の幸運を願って集まった人々と抱き合い,興奮を分かち合う。

アリーの両親,ラスとキャシーも興奮に顔を輝かせている。二人はこれまで4人の子供たちが同じように召しの手紙を開け,日本,カナダ,グアテマラ,ドミニカ共和国での伝道に旅立つのを見守ってきた。

「伝道はすばらしい経験です。わたしも経験しましたし,アリーの上の子供たちも経験し,アリーは5番目になります。これ以上の喜びはありませんね。最高ですよ」とラスは語った。

ラスはその日,すぐ上のきょうだいと5歳離れた末っ子のアリーが家から離れ,大学の寮に入るために引っ越しを手伝った。

「アリーを送り出したのと同じ日に,伝道の召しを受けて,今日は胸がいっぱいですね。でも,すばらしいです」とラスは語る。

居間に集まった人々が少なくなった後,アリーは宣教師として自分が身に受ける責任について思い巡らした。

「教会員であるわたしたちは,『キリストの御名を身に受ける』と言いますが,宣教師として,文字どおり,イエス・キリストと書かれた名札を胸に着けます。そう思うと,少し荷が重いようにも感じますし,ちょっと緊張しています。でも,人々に仕え,愛し,人々の生活にその喜びをもたらすことができると思うと,とてもわくわくします。待ち切れません。」

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