2019年6月5日から6日にかけて,佐賀県の嬉野温泉にて九州地区シニアカンファレンスが開催された。
シニアカンファレンスは60歳以上の教会員とその伴侶を対象に,アジア北地域*1会長会の主催により行われている。2018年には関東地区,関西地区でも同様のプログラムが開催された。
その目的は,シニア世代の会員たちが同世代の会員たちとの親交を深め,信仰を鼓舞する機会をもうけることであった。九州地区のシニアカンファレンスのために当時アジア北地域会長会の顧問を務めていた山下和彦長老*2によって開催地に選ばれたのは和多屋別荘。嬉野川のほとりの二万坪の広大な敷地にたたずむ,由緒ある温泉旅館である。
*1アジア北地域 教会を管理運営する地理上の区割りにおいて日本が所属する地域
*2長老 末日聖徒イエス・キリスト教会の神権指導者に与えられている称号
喜びと期待を胸に集ったシニア世代の会員たち
カンファレンス当日,西日本を中心に集まった参加者は総勢206名。最高齢は数えで90歳の平敷初江(へしき はつえ)姉妹*3である。他の会員たちの助けを受けながら,元気な足取りで参加した。
また車椅子の西原則子(にしはら のりこ)姉妹と献身的に姉妹に寄り添う伴侶の西原里志(にしはら さとし)兄弟は口々に「初めてのカンファレンスが楽しみです。この機会に旧友と友好を温めたい」と話し,二日間の活動に期待を寄せた。
和多屋別荘の玄関先で山下和彦長老,田鶴子姉妹と地域七十人の永友裕長老,栄子姉妹が出迎え,到着した会員たち一人一人と握手を交わしていた。
*3姉妹 教会では,すべての人が神の子供たちであるとの教えから,男性を兄弟(Brother),女性を姉妹(Sister)と呼称する
山下和彦長老からのメッセージ
和多屋別荘の大宴会場「孔雀の間」に兄弟姉妹が揃ったところで,アジア北地域会長,チェ ユーンフワン(崔崙煥)長老・チェ・ク・ボンキュン(具本京)姉妹,第二顧問の和田貴志長老・直美姉妹,そして山下長老夫妻が入場し,カンファレンスが始まった。
第1日目のディボーショナルを担当したのは山下長老である。「奉仕について」ではシニア世代が夫婦宣教師として伝道に出る時に直面する3つの問題が取り上げられた。3つの問題とは,ひとつめに経済的な問題,つぎに健康の問題,そして介護の問題である。その問題を解決する方法について回答を求められた永友長老は「まずは決心することです。決心すれば神様が道を備えてくださいます」と証した。
続けて山下長老は神様が望んでおられることを知るために預言者の声に耳を傾けること,シニア宣教師はコミュニケーション,リーダーシップ,コンピューター技術などに優れていることなどを挙げ,「新たな技術を使って奉仕をしましょう。長年に渡る教会への献身や社会生活を通して培った能力を生かして人々を祝福できます。フルタイムだけでなく,在宅での奉仕宣教師など皆さんたちに合った方法があります。皆さんたちの指導者に相談してください」と参加者を励ました。
今回がアジア北地域での最後の奉仕となる山下長老は,アジア北地域での最後の話として「残りの人生」についても触れた。主の教えを私たちが実践できるように考え,始まったのがミニスタリング*4である。主がして下さったと同じように,今もこれからもする。フルタイムの宣教師であっても,奉仕宣教師であっても,また家庭にあってもミニスタリングをする機会はある,と話し,集まった会員を勇気づけた。「あなた方の良いところを伸ばし,預言者が望んでいる,今すべきことをし,これからすべきことをすることが次の世代の人たちの財産になり,私たちの人生を素晴らしいものとします」と話し,会を終え,東京への帰路についた。
*4ミニスタリング ミニスタリング(Ministering)とは,イエス・キリストが行ったように人々の必要をよく見極めて一人一人に仕えること。キリストの弟子であるクリスチャンの奉仕の理念である
シニア世代が直面している問題について話し合う懇親会
夕食後は孔雀の間でチェ長老夫妻,屋外のコットンクラブで和田長老夫妻との懇親会が開かれ,質疑応答を中心とした話し合いの機会が持たれた。
チェ長老には「子供とのコミュニケーションが難しくなり,話ができない」との質問が寄せられ,ボンキュン姉妹が自身の体験を話した。十代の息子と会話ができなかった時に,何日も涙を流し,祈り求めた答えは「子供に感謝の気持ちを伝えなさい」というものだった。「どう探しても見つかりませんでした。でも探し続けていると一つ,また一つと感謝の言葉が見つかりました。次に彼が喜ぶことをしました」。このたゆまぬ努力が子供の心を開き,会話が増えたと証し,「私たちが諦めなければ,神様は諦めることはありません」と結んだ。
和田長老夫妻の元には,高齢化によって教会や神殿に行くことが難しくなった時,どうしたらいいのか,という質問が寄せられた。和田長老は,この問題は日本の置かれている少子高齢化と関係があり,全国の教会で同じような問題を抱えていると話した。「まずは皆さんたちの指導者によく相談してください。この問題にもミニスタリングを使うことで何らかの方法が見つかることもあるでしょう」と続け,アジア北地域会長会でもこの問題についてはこれからよく検討すると説明した。
簡潔で力強い主の教え
翌日はチェ長老と和田長老によるディボーショナルが行われた。
和田長老の話は「イスラエルの集合」*5についてである。イスラエルの集合には神殿も含まれる。神殿での聖約に従うこと,主の器となってともに手を取り合って働くこと,イエス・キリストが教えたように,天父を愛し,隣人を愛することはイスラエルの集合に参加していることだと教えた。
チェ長老は家族写真を用いて父親の話をした。チェ長老の父親は若い時に日本に来て様々なことを学び,後年は政治家や教会の指導者になった。「父は『悪い人から悪いことを学ばないで,良い人から良いことを学びましょう』と繰り返し私に伝えました。皆さんもそのようであってください」と語りかけた。また「家庭中心,教会サポート」についても話した。「家庭を単に教義を教える場にしないで,教会で学んだことや感じたことを話す場にして下さい。リラックスして気楽に話せるよう心がけて下さい」。そして「天にいくと奉仕そのものが私たちの生活となります。生涯をかけて奉仕とミニスタリングを行いましょう」と話し,会を締めくくった。
*5イスラエルの集合 古代から現代にいたる預言者が散らされた主の聖約の民は再び集められると宣べている。現代においての集合は人々が福音を受け入れ,儀式を受け,聖約を結ぶという形で行われている。詳しくはこちらのページをご参照ください
再会を望んで
このたび実行委員長を務めた新海玉喜(しんかい たまき)兄弟はカンファレンスについて「霊的な集会,質問に対する地域会長会からの真摯な答えに皆さんが大変喜んでいました。またこのような集会をいつの日か持てたらと望んでいます」と感動の面持ちで振り返った。
また愛媛県の今治支部から参加した村上マツ子(むらかみ まつこ)姉妹は「伴侶の淑一(よしかず)兄弟は抗ガン剤の治療で一命をとりとめました。頂いたこれからの人生をどう過ごすか,その答えをこのカンファレンスで頂きました。遠い道のりでしたが参加して本当によかったです」と話した。
短い休憩の合間にはそこここで再会を喜ぶ姿が見られ,また新たな友となった兄弟姉妹との出会いもあり,参加者たちは霊的な雰囲気と和やかさに満ちた二日間を過ごした。