モルモン書に興味を持っている人なら誰でも、今まで以上の臨場感を持って1829年にジョセフ・スミスが口述で原稿を書き取らせた部屋にいるかのような体験をすることができるようになった。
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教会歴史出版部(Church Historian’s Press)は、カラー写真や誰が書いたかを色分けで示したモルモン書のオリジナル原稿が掲載されたジョセフ・スミス・ペーパーズ(Joseph Smith Papers)の最新巻を発行した。これは、オリジナル原稿の残存部をすべて写真撮影して収めた最初の記録である。
この新刊は『ジョセフ・スミス・ペーパーズ:啓示と翻訳、第5巻:モルモン書のオリジナル原稿』と呼ばれるもので、「啓示と翻訳」シリーズの最終巻となる。またこの巻は、2023年春に全26巻が完成予定の、より大規模な書籍『ジョセフ・スミス・ペーパーズ・プロジェクト』の23巻目でもある。
この書籍はjosephsmithpapers.orgにて購入が可能である。画像、原稿、はしがき、参考文献を含むこの書籍の内容は、18カ月後にはオンラインで無料アクセスできるようになる。
ネルソン大管長の謝辞
2022年1月25日(火)の午後、テンプルスクエアにある教会管理本部ビルにおいてラッセル・M・ネルソン大管長は、この書籍完成に携わった関係者に感謝を述べた。関係者には、編集者のロイヤル・スカウセンとロビン・スコット・ジェンセン、そして『ジョセフ・スミス・ペーパーズ・プロジェクト』の資金援助を行ったゲイル・ミラー、彼女の夫の故ラリー・H・ミラー、そして現在の夫キム・ウィルソンが含まれていた。
ネルソン大管長は、『ジョセフ・スミス・ペーパーズ・プロジェクト』は各巻が素晴らしく有意義なものであるが、「啓示と翻訳」シリーズは特に他に類を見ないものであると述べた。そして、「ここに記録された啓示と翻訳は、ジョセフ・スミスの預言者としての使命の中心を成すものであり、記された文書は福音の回復に不可欠なものでした」と話した。
大管長は、「第5巻はわたしの心に深い感銘を与えるものです。この巻によってわたしは、ジョセフ・スミスにモルモン書を翻訳する力を与えた神の賜物と力をよりよく理解することができます」と語った。
ネルソン大管長は、モルモン書のオリジナル原稿は教会の所有物の中で最も意味がある神聖な遺物の一つであるとした。
「教会の歴史家たちは、1世紀以上にわたり、最も小さな欠片に至るまでオリジナル原稿を集め、これ以上の損傷を防ぐために多大な労力を払い保存してきました。今回の最新巻が出たことで、ほんの小さな欠片に至るまで原稿の残存部を見ることができ、そのそれぞれが全体の一部として再現されているのを目にすることができます。モルモン書のオリジナル原稿の画像を載せた本が入手できることになり、嬉しく思います。神の手が御自身の御業を進めておられるのを本の中に見ることができ、深い感動があります」と大管長は説明した。
「教会指導者らと多くの教会員を代表して、今回、『ジョセフ・スミス・ペーパーズ・プロジェクト』に最新巻が加わったことを心から祝い、また感謝したいと思います」とネルソン大管長は語った。
ゲイルとその家族が『ジョセフ・スミス・ペーパーズ』に関わることになったのは、まさに霊感を受け、それに従い行動を起こしたことから始まる。
2009年にラリーが亡くなった後、ゲイルはプロジェクトの資金援助を続けるか否かについて思い悩んだという。米国は不景気となり、経済的な余裕はなかった。所有する資金を賢明に使う必要があった。ゲイルの息子グレッグはファミリービジネスを経営していた。ゲイルは、「節約が必要です。在庫削減、人員削減、経費削減が必要です」と言ってきた息子に対し、同感だが与えることを止めることはできないと伝え、『ジョセフ・スミス・ペーパーズ・プロジェクト』の支援は続けたと話した。
そして、「これは神聖な業であることを知っています。教会にとって、また『ジョセフ・スミス・ペーパーズ』のために働いている人々にとって、そして真理を突き止めるためにも、この業は重要で不可欠なものであると知っていました。ジョセフ・スミスの歴史そのものがそれを語っています。モルモン書は教会の基です。ジョセフは自分が何をしているか理解していました。彼は自分が天から教えを受けていることを知っていました。彼の業によって、世界がそれを知ることになるのです」とゲイルは続けた。
スカウセンは、今回のジョセフ・スミス・ペーパーズの最新巻は画期的なものになるという。
「この新刊は、先見者ジョセフ・スミスがモルモン書を翻訳したことをわたしたちが間接的に目にする最良の機会を与えるものです。この原稿は翻訳作業を目にした人が語った内容を裏付ける重要な証拠となります。ジョセフは解訳器に示される英語の文章を1語ずつ口述して書き取らせたのです。必要なときに、ジョセフは名前を正しいスペルで綴ることができました。これはまさに、奇しき御業です」とスカウセン話した。
ジェンセンは、モルモン書のオリジナル原稿を読むということは、オリジナルのパウロの手紙を見るようなものだが、そこには1つ大きな違いがあるという。
「聖書にある文章のオリジナル原稿は現存していません。通常、わたしたちが手にしているものは、第2、第3、あるいは第4世代のコピーです。実際に口述したものを書き取った原稿はありません。今、わたしたちの目の前にあるモルモン書のオリジナル原稿は、オリバー・カウドリまたはジョン・ホイットマー(または、ジョセフが文章を口述してもらった他の人)によって書かれた原稿の遺物です。この文書は、あの奇跡的な経験に最大限近づくことを可能にするものです。この原稿は、神聖な翻訳の産物です」とジェンセンは話した。
原稿の歴史
モルモン書のオリジナル原稿(現存するのは28%のみ)は末日聖徒イエス・キリスト教会が所有する最も重要で神聖な遺物の一つである。原稿は、1829年4月~6月に神の賜物と力によって、ジョセフ・スミスが翻訳し口述でオリバー・カウドリなど数少ない筆記者に書き取らせたものである。
オリジナル原稿は、1841年に末日聖徒らがイリノイ州ノーブーにおいて神殿(礼拝用)とノーブーハウス(訪問者もてなし用)を建て始めるまで、ジョセフ・スミスが所有していた。そしてジョセフは、ノーブーハウスの隅石にオリジナル原稿を収めた。
初期の聖徒らは、これで原稿が保存されると考えたが、実際にはうまくいかなかった。時間とともに原稿はひどく色あせ、字は判読不能となり、紙は損傷を受けた。
ジェンセンは、「彼らにしてみれば、原稿を隅石に入れ、溶解鉛を継ぎ目の周りに流し込むことで、保存できると考えたのでしょう。でもうまく行きませんでした。…タイムマシンがあれば当時に戻って、そんな保存法は使わないようにとジョセフに伝えるでしょう」と述べた。
40年後、ルイス・ビダモン(ジョセフの妻エマの2番目の夫)によって原稿が取り出されたとき、大部分は劣化していた。石をくり抜いて作った空洞には水がしみ込んでいたのである。そして長年にわたり、ビダモンは原稿の欠片をノーブーに来た数々の訪問者に渡していた。
ノーブーハウスの隅石に納められた500ページ近くの原稿のうち、232ページが部分的に残った。現在、そういった欠片やページのほとんどを教会が所有している。そのほかの部分は個人の手にあるが、所有者から欠片の写真撮影の許可が下りたため、第5巻に掲載されることになった。
教会歴史出版部のディレクターであるマシュー・マクブライドは、「(オリジナル原稿がたどった道は)まさにオデッセイともいうべき長期の旅でした。原稿はばらまかれましたが、わたしたちはそれを再び、完全な形に戻すために集めてきました。第5巻を見ていただければ、それがわかるでしょう」と話した。
マルチスペクトル画像
長年にわたり、教会は原稿の写真画像を数セット作ってきた。1958年、原稿保存を前に、そしてさらに原稿が劣化する前にと、教会は白黒写真を撮影した。2017年、教会歴史部は原稿片の色あせた文字をより鮮明に撮影するためにマルチスペクトル画像(MSI)を用いた。MSIは紫外線、赤外線、可視光線を用いて撮影を行う方法である。
「第5巻では、オリジナル原稿そのものよりも良い画像で原稿を見ることができます。オリジナル原稿ではインクが色あせ、文字が見えなくなっているところもあるからです。第5巻には、目には見えない文字まで浮き上がらせて見えるようにした画像が収録されています」とジェンセンは話した。
ジェンセンによると、MSIよりも以前の白黒画像の方が鮮明に見えるページもいくらかあるという。第5巻の付録には、MSI画像と白黒画像の両方が収録されているという。
原稿
第5巻の原稿と注釈は、「モルモン書重要テキストプロジェクト(Book of Mormon Critical Text Project)」の一部としてスカウセンが行ってきた仕事で執筆されたものである。第5巻では、現存のオリジナル原稿、マルチスペクトル画像、そして歴史的写真を分析した結果に基づいてオリジナル原稿を復元している。原稿では、修正、改訂、改行、改頁、行間への挿入文の場所などすべてを忠実に再現している。オリジナル原稿には、数人の筆記者が改訂を加えているため、分析をしやすくするために各筆記者の手書きを異なる色で示している。包括的で注意深くまとめられた第5巻は、研究者に今までになかった方法でオリジナル原稿を提供する。
ジェンセンとスカウセンはともに、モルモン書のオリジナル原稿は、現在、末日聖徒イエス・キリスト教会が発行する最新のモルモン書と全く同じではないと語る。筆記者の間違いに対する修正、文法的修正、スタイル変更、さらには文章の韻文化や各章の標題の追加、その他の改訂など、教会指導者らは必要に応じて文章に調整を加えてきた。
しかしスカウセンは、「今日のモルモン書はオリジナルのモルモン書をかなり忠実に再現したものです。加えられた変更は実は大きな変更ではありません。『教義と聖約』を見ると、『戒めの書』に対して数章にわたり書き直されたなど、変遷が見られるなどは周知のとおりです。しかし、モルモン書にはそういったものはありません。モルモン書にはそのような編集は加えられていません」と話した。
ジェンセンは、長期にわたり文章に小さな変更しか加えられなかったことは、モルモン書が教会のシンボルとしてはっきりと示されたものであると考えることができるという。そして、「わたしたちは常に変化しています。教会員のニーズに基づいて、常に調整を加えています。モルモン書の文章も同様に読むことが可能です」と述べた。
‘霊的な宝物’
オリジナル原稿が歴史的な価値を持つことは明らかであるが、マクブライドとジェンセンはその霊的価値が比類なきものであると述べる。
「今回新しく発行された『ジョセフ・スミス・ペーパーズ第5巻』は、実際に神聖な遺物を手に取る経験に最も近いものを提供してくれます」とマクブライドは述べた。そして「わたしにとっても他の末日聖徒にとっても、信仰を持つ者として、この第5巻がとても意味のある書物となります。これはわたしたちのイエス・キリストへの信仰と証の基礎となる書物だからです」と続けた。
ジェンセンは「原稿は霊的な宝物の中で最も重要なものです。モルモン書が有する霊的な真理の力を経験した人なら誰でも、この原稿は特別なものであると確信することができます」と述べた。
そしてスカウセンは、モルモン書を聖典として受け入れない人にとっては、少なくともジョセフが多くの啓示を受けていたことを示すものとしてこの原稿が重要であると話した。
「モルモン書はジョセフ・スミスが受けた啓示として、他を大きく引き離して最大のものです。教義と聖約は1つの書物ではなく、別々に受けた啓示をまとめたものです。…聖書でさえもモルモン書とは比べ物になりません。聖書も単一の書物ではありません。…モルモン書は大きな、大きな啓示です。…これは驚異的に大きな御業です」とスカウセンは語った。