ニュースリリース

シニア夫婦宣教師と七尾支部の会員、地域の人々と共に震災を語り伝える「思い出のピアノ」寄贈の架け橋となる

(この記事の内容は「テレビ金沢」と「北陸朝日放送」で放送されました。「北陸朝日放送」では「末日聖徒イエス・キリスト教会」の名前が呼ばれ、掲載されています。ページ下部のリンクからご視聴いただけますので、ぜひ合わせてご覧ください。)

2025年3月11日から12日にかけて、能登半島地震で被災した石川県中能登町の住宅から救い出されたピアノが、新しい寄贈先へ送られました。

送り主は石川県鹿島郡に在住する船塚久徳(ふなづかひさのり)さんです。久徳さんのお父さんはすでに逝去されており、中能登町の実家にはお母さんが一人暮らしをしていました。ところが2024年1月1日、地震で実家が被災し、13日後には過度のストレスや生活の変化で体調を崩したお母さんは救急搬送され、搬送先の病院で急性心筋梗塞により帰らぬ人となってしまいます。

実家には両親が近くの集落の知人から譲り受けたピアノがあり、久徳さんの子どもたち皆が親しみ、とくに保育士を目指した娘さんは熱心に練習をしていたといいます。持ち主を失ったピアノは、しばらく放置されていました。

そして震災から1年後の今冬、久徳さんは、誰も住んでいない両親の家の解体を決意します。末日聖徒イエス・キリスト教会の七尾支部会長である藤田晋宏(ふじたのぶひろ)兄弟*1がお母さんの診療医だったこともあり、七尾支部の会員は久徳さんに家財の搬出と処理を申し出ました。

家の中をおおむね片付けると、最後に重いピアノだけが残りました。久徳さんは、家もろともにピアノも壊すつもりでした。しかし、地震による汚れや傷があるものの、両親が残してくれたピアノはまだまだ十分弾けるものでした。手伝いに来ていた七尾支部の会員はピアノを見て可哀そうにと思い、このピアノをなんとか活かそうと他の教会員にも呼びかけます。久徳さんはピアノの処分も教会に依頼することにしました。

2025年1月19日、教会の集会後、教会員10数名が久徳さんの両親の家からピアノを運び出し、金沢ステーク*2扶助協会会長の平田寿子姉妹宅に預け入れました。引き取り手が決まるまでの間、ピアノは専門業者により清掃、修理、調律などが行われ、平田宅で保管されることになりました。

まもなく、名古屋伝道部の夫婦宣教師である清水広明長老・賀壽子姉妹は、ピアノを引き取ってくれる人を探し始めました。清水夫妻は、地震直後から様々な支援を通して七尾市民と深い絆を築いてきました。二人は七尾市能登島野崎町にある正願寺(しょうがんじ)の聖川(ひじりかわ)つぼみさんに「ピアノの命を救ってほしい」と頼みました。そして、聖川さんがしらみね大学村のメンバーである行勧寺(ぎょうかんじ)の永吉証(ながよしさとる)さんにピアノのことを話したところ、永吉さんの仲立ちで金沢大学先端観光科学研究所白山サテライトにピアノを引き取ってもらえることになりました。

能登島野崎町は、清水長老姉妹や金沢ステーク、七尾支部の会員たちが、能登半島地震発生直後から支援をしてきた地域であり、正願寺は関わりのあった寺の一つです。

3月11日午前、ピアノは専門業者により平田宅から搬出され、100㎞以上離れた石川県白山市白峰に向かいました。翌12日午前には、2m近く雪が残る山間部にある金沢大学先端観光科学研修所白山サテライトに無事届けられました。

ピアノが搬入されるとすぐに、金沢大学の講師である坂本貴啓(さかもとたかあき)さんによる初の音出しがあり、サテライトに集まっていた北陸・中部圏の大学生がピアノを囲み、皆でピアノの到着を喜ぶ姿がありました。今回かかった一連の費用は、教会が支援を行いました。

3月31日午後1時、運び込まれたピアノは再度の調律を終え、金沢大学先端観光科学研究所白山サテライトの和室の中央に置かれていました。初のコンサート会場には、サテライトの学生のほか、近隣から50人以上の人が駆けつけました。

ピアノは被災した家から運び出されたものとは思えない澄んだ軽やかな音色を奏で、聞く人を魅了し、この日披露された全14曲の演奏に大きな拍手が送られました。金沢ステークで奉仕している宣教師4人も招待され、「ノクターン」「月の光」などのピアノ独奏、ピアノ・バイオリン・フルートによるクラシックや讃美歌を演奏しました。会場となったサテライトは、地域の課題解決や地域社会のさらなる活性化を目的に今年2月に開設されたばかりで、このコンサートが最初の記念すべきイベントとなりました。

会場にいる人の中には、「感激して、自分の昔のことを思い出して泣いてしまいました」「このピアノのおかげで、地震や被害を忘れてはならないと思っています」と語る人もいました。ピアノ寄贈の仲立ちをした聖川さんは、「自分の大切なものをまた別の人が使ってくれると持ち主の方も嬉しいでしょうし、私たちも本当に(ピアノを)ここに持ってきてよかったなと思います」と語りました。地震に耐えたピアノが、新たな場所でまた優しい音色で人々の記憶や感情に働きかけます。


このコンサートの模様は、「テレビ金沢」の夕方のニュースで紹介されました。4月2日の夕方には「北陸朝日放送」で放映され、4月12日の土曜日にも追加で視聴者に届けられました。

テレビ金沢:https://www.youtube.com/watch?v=FTO_lNCo6P4
北陸朝日放送:https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=N4RuROQHPO0

*1 兄弟、姉妹 末日聖徒イエス・キリスト教会では、すべての人が神の子供たちであるとの教えから、男性を兄弟(Brother)、女性を姉妹(Sister)と呼称する。

*2 ステーク 地元の会員の集まりである「ワード・支部」が集まって構成されるより大きな地域的組織。

書式ガイドの注釈:末日聖徒イエス・キリスト教会に関する記事で,教会の名称を最初に引用する際には,正式名称を使うようお願いいたします。教会の名称の引用に関する詳しい情報は,こちらへ: 書式ガイド書式ガイド.