2019年3月17日、東京にある児童養護施設「星美ホーム」で行われたイベントにて、カトリック教会と末日聖徒イエス・キリスト教会の代表者が,社会へ巣立つ卒業生にプレゼントを贈った。六本木のカトリック教会,フランシスカン・チャペル・センターのオーファンズ・ミニストリー(児童養護施設支援グループ)から木村悦子氏が,また末日聖徒イエス・キリスト教会から大西知子姉妹*、夫婦宣教師のグレームス夫妻、広報宣教師のベイツ夫妻、そして東京南ステーク広報ディレクターのエイプリル・クック姉妹が同施設を訪れた。
*教会では,すべての人が神の子供たちであるとの教えから,男性を兄弟(Brother),女性を姉妹(Sister)と呼称する。
星美ホームは「キリスト教的な人間観、世界観により、自立・自己実現を目指して子供たちを育てる」ことをモットーに運営されている。子供たちに「責任感、素直さ、柔軟性、強さ、そして優しさを持つように」と励ましている。
星美ホームから今年卒業したのは男子3人、女子6人であった。そのほとんどがすでに就職先を決め,施設を出た後の住まいも決まっている。木村悦子氏が各卒業生に布団セットを贈呈した。また同氏からは「洋服の青山」で使える商品券も手渡された。卒業生たちはこの商品券を使い、社会人として必要な洋服などを買い揃えることができる。
大西知子姉妹は手作りのキルトを卒業生一人一人に贈った。
子供たちは,卒業の一年前に好みの色を尋ねられていた。卒業間近に行われる贈呈式において、各卒業生が好きな色の生地で作られた手作りのキルトを受け取った。みんなに披露するためにキルトを広げると、部屋には歓声が上がった。
このプロジェクトに参加している末日聖徒イエス・キリスト教会の姉妹たちは、スティックス・アンド・ストーンズ*と呼ばれる模様を用いてキルトを作っている。中野ワードの姉妹たちによって、各キルトには,キルトプロジェクトの名称である「ステッピング・ストーンズ」と教会ロゴのラベルが縫い付けられる。
*棒のような長方形(Sticks)と,石のような正方形または円(Stones)を組み合わせて作るキルトの図案パターン
キルトともに贈られた手紙には、人生のステッピング・ストーンズ(踏み石)について書かれていた。一人一人が自分の人生において歩む道がある。施設を卒業した子供たちは次の踏み石に移ることになる。新しい生活を始めるにあたり、キルトを作った人たちが陰ながら応援していることを子供たちが思い出せるように,との願いがこのプレゼントには込められている。
今年贈呈されたキルトには、教会の横田軍人ワード、浦安ワード、そして中野ワードの扶助協会の女性たちや国立ワードの若い女性(中高生)たちが作ったものが含まれていた。またアメリカ在住の女性の会員たちによって作られたキルトも少なくなかった。
事の始まりは2012年である。当時,アジア北地域の広報宣教師として奉仕していたシンシア・グレームス姉妹が,東京の英語を話す人のためのカトリック教区であるフランシスカン・チャペル・センターのラッセル・ベッカー牧師に会い,「共同で行える支援活動はないか」と尋ねた。同センターが,星美ホームと聖ヨゼフホームの卒業生に布団を贈っていることを知ったグレームス姉妹は、同施設に末日聖徒イエス・キリスト教会からキルトを贈ることを提案した。
贈呈は2013年に始まり,グレームス夫妻の離任後は、地域広報ディレクターを引き継いだ関口治兄弟と妻の貴子姉妹が贈呈活動を続けた。
キルト作りプロジェクトは,グレームス姉妹からジュリー・ウェルチ姉妹に託され,現在は大西知子姉妹が引き継いでいる。
始まった当時は、芯になる中綿を日本で入手できなかったため,キルトは海外で作られていた。その後、米国に旅行した姉妹たちがスーツケースに入れて日本に持ち帰った中綿を使用し、何人かの日本人の姉妹たちがキルト作りを始めた。現在、贈呈するキルトの約半数が日本の姉妹たちによって作られている。キルト作成に必要な材料は米国で購入して送られることもある。それらは東京ステークの予算で賄われる。一方、現在も米国内にいながら協力を続ける扶助協会の姉妹たちがおり、彼女らの作品は日本に運ばれ寄付されている。
今年、夫婦宣教師として日本で3度目の奉仕をしているグレームス姉妹は,星美ホームでのキルト贈呈式に参加して,「すばらしいとしか言いようがありません」と嬉し涙を流した。「夢見ていたことが実現し、生徒たちの喜ぶ姿を見ることができ、本当に神様の祝福を感じました」と彼女は笑顔で話す。
現在、このプロジェクトを拡大し、卒業生には施設を出た後の新しい住まいで使用できる家庭用品などを贈ることも検討されている。