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ニュースリリース

教会の女性の代表が,沖縄戦のひめゆり学徒隊から生還した女性を訪れる

ニカラグア出身のレイナ・I・アブルト姉妹夫妻と,チェ会長夫妻の沖縄訪問

                

末日聖徒イエス・キリスト教会の中央扶助協会(General Relief Society)会長会第二顧問であるレイナ・I・アブルト姉妹が,2019年3月上旬に日本を訪れた。

扶助協会は,600万人に上る18歳以上の女性教会員の組織として知られている。人を支え,癒し,慰めの手を差し伸べるという,女性ならではの特質を発揮して世界に貢献することを旨とする。その信条は「慈愛はいつまでも絶えることはない」との聖書の言葉である。

*教会では,すべての人が神の子供たちであるとの教えから,男性を兄弟(Brother),女性を姉妹(Sister)と呼称する。

レイナ・アブルト姉妹は中米のニカラグア出身で,幼いころマナグア大地震(1972年)に遭い,兄を亡くしている。その後,ニカラグア内戦の戦火にさらされつつ少女時代を送った。1984年,レイナは結婚して米国サンフランシスコへ移住,息子を授かるも,夫の薬物依存により結婚生活は破綻する。それからほどなくして,教会の夫婦宣教師の訪問を受け,傷心の彼女は希望を見いだした。1989年11月,末日聖徒イエス・キリスト教会の会員となり,メキシコ出身の現在の伴侶アブルト兄弟と出会った。アブルト姉妹の波乱の人生を描いた3部作の映像作品がリリースされている。

*ビデオ第一部の字幕で「弟」とあるのは「兄」の誤り

                                                  
                                                       
                                                       

 

3月5日(火)に韓国から沖縄入りしたアブルト夫妻は,その晩,教会の女性指導者のための集会に臨んだ。教会のアジア北地域会長であるチェ・ユーンフワン会長夫妻が同行した。

*この集会の模様は以下のリンクから視聴できる

https://bcove.video/2Hm5Qdo

翌6日朝,視界も霞むほどの土砂降りに見舞われる中,アブルト夫妻とチェ夫妻は與座宏章(よざ・ひろあき)沖縄ステーク会長の案内で,沖縄戦の戦跡がある糸満市へ向かう。仲里正子(なかざと・まさこ)さん(91歳)と会うためである。

仲里さんは「ひめゆり学徒隊」 の一員で,「鉄の暴風」と形容される沖縄戦を生き抜いた。戦後,教師になり,1989年に開館した「ひめゆり平和祈念資料館」で長く証言員を務め,若い世代へ戦争の悲惨さを伝え続けている。仲里さんには今,2人の子供,7人の孫,12人のひ孫がいる。娘の平良伸子(たいら・しんこ)姉妹とその子供たち,ひ孫たち18人が教会の会員である。2018年,仲里正子さんの戦争体験とファミリーヒストリーを描いた映像作品「ひいお祖母ちゃんからのたすき」が制作され,全国各地の教会における「家族歴史フェア」で上映された。

*ひめゆり学徒隊とは,沖縄陸軍病院の看護要員として動員された女学校の生徒たちである。1945年4月,中部海岸から上陸した米軍により南部に追いつめられ,南部海岸沖からは米軍艦の艦砲射撃が雨のように降り注ぐ中,最終的には240名の学徒隊員の136名が死亡した。戦後,ひめゆり学徒隊が最後に奉仕していた天然の洞窟「井原第3外科壕」脇に「ひめゆり平和祈念資料館」が建立され,その歴史を伝えている。

             

     

 

午前11時前,一行が「沖縄県営平和祈念公園」に到着する頃には雨はやんでいた。與座会長はまず,沖縄平和祈念堂に隣接する「韓国人慰霊塔公園」へと案内する。この公園は韓国人により整備されたもので一般にはあまり知られていない。「チェ会長ご夫妻をここに案内したいとかねてから思っていました」と與座会長は言った。沖縄戦で亡くなった韓国人のための慰霊塔にチェ姉妹とアブルト姉妹が献花する。慰霊塔の前でチェ会長は,「国の違いや歴史的経緯を乗り越え,わたしたちは同じ神様の子供として,互いに愛し合うことができるのです」と話した。

與座会長は,「沖縄の人間としてこの戦争には複雑な思いを持っていますが,一つはっきりしているのは,韓国や台湾の方々には大変申し訳なかったと。同じ神様の子供として,その方々が昇栄できるように心から願っています」とチェ会長に語りかけた。

また,沖縄戦の犠牲者20万人の名前を刻む「平和の礎(いしじ)」,その外国人名区画にある,台湾・韓国・朝鮮人ための石碑を訪れる。ここでもチェ姉妹とアブルト姉妹が花を手向け,哀悼の意を表した。「刻まれた米軍兵士の名前の中には,メキシコ系米国人の名前もあるかもしれませんね」と與座会長はアブルト兄弟に語った。当時の敵味方を問わず名を刻んで追悼していることにアブルト姉妹は強い感銘を受けていた。

次に一行は,車で数分の「ひめゆりの塔(井原第3外科壕跡)」へ向かい,アブルト姉妹とチェ姉妹は献花台に花を捧げる。

隣接する「ひめゆり平和祈念資料館」の入口では仲里正子さんが待っていた。チェ会長夫妻とアブルト姉妹は仲里さんの手を握り,感激の面持ちで挨拶する。アブルト姉妹は「昨晩,あなたのビデオを見ました。あなたは強い方です。お会いできてほんとうにうれしいです」と話しかけた。チェ会長は仲里さんに,アブルト姉妹のことを「教会の女性の代表を務めている人」と紹介した。

仲里さんは,証言員の意思を継承する資料館の若いスタッフを一行に紹介し,90代とは思えないしっかりとした足取りと張りのある声で先導,自ら館内を案内する。アブルト姉妹はその様子に,「ネルソン大管長(94歳)のように早く歩きますね」と感心していた。アブルト姉妹とチェ姉妹はともに,館内に展示されている仲里さんの女学生時代の写真に見入っていた。

仲里さんの通った沖縄県女子師範学校での学生生活,戦局の悪化と米軍上陸,病院壕での戦場の実態,突然の解散命令,さまよった戦場……仲里さんの語るひめゆり学徒隊の戦争体験に,ニカラグア内戦を経験してきたアブルト姉妹は共感をもって耳を傾けた。

資料館見学の感想を書くコーナーで,チェ会長とアブルト姉妹は教会を代表してそれぞれの思いをじっくりと記した。

資料館の出口でチェ会長は,予定の時間を延長して仲里さんに語りかける。

「あなたが戦争の悲惨さ,平和の尊さについて,多くの若い人たち,将来の世代へ伝えてくださっていることを心から尊敬し,感謝しています。ここで,また沖縄戦で亡くなられた仲里さんのご友人たちが,今は平和のうちに霊界で幸せな状態にあることを知っています。すばらしいお子さんやお孫さんがおられますね。あなたが生きてくださったことに本当に感謝します。」

仲里さんは,「わたしは生かされた,生かされていると思っています」と謙虚に答える。

チェ会長は仲里さんをこう招いた。「今,子供や孫,ひ孫に囲まれた幸せな有様が永遠のものになるのです。ぜひ,福音を学び,バプテスマを受けて教会に入ることをもう一度,考えてみてください。仲里さんは,霊界にいる(ひめゆり学徒隊の)友達や先生に会ったとき,キリストの光を強く放って伝えることのできる人だと感じます。福音を受け入れることで,地上でさらに光を放ち,希望のメッセージを伝えることができると感じます。」

チェ会長は後に,娘の平良伸子姉妹にこう語った。「今朝早く,目が覚めたとき,仲里さんを教会へ招くようにと強く感じたのです。」

資料館を出て歩みを進めながらアブルト姉妹は,「戦争にはなにもいいことがないですね」としみじみ述懐した。◆

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