サモアのアピアで末日聖徒イエス・キリスト教会が運営するこの歯科クリニックに入ると、モルモンの歯科医の治療を受けようとカルメル会の修道女2人が待っていた。これは不思議な光景に見えた。
この歯科クリニックをどうやって知ったのかと尋ねられたカルメル会の修道女マーガリタ・ペテロは、この日同行した自分の姉妹が以前ここで治療を受けたという。
問い合わせがあったとき、歯科医の一人の妻でありクリニックでボランティアとして働くコニー・レンチャーは、宗教にかかわりなく、歯科治療を必要とする人には誰でも無料で治療すると伝えた。
歯科クリニックのことは口コミで広がったが、このクリニックがサモア・アピア神殿を含め、末日聖徒イエス・キリスト教会が所有・運営する多数の建物に囲まれたペセガという地域に位置することから、来院できるのはモルモンに限られていると思う人がいるかもしれない。
クリニックには現在2人の歯科医師、ジョージ・スペンサー医師とクレイグ・レンチャー医師が勤務している。スペンサー医師は教会の専任宣教師であり、一方レンチャー医師は2か月間サモアで働くボランティアである。
この2人の歯科医は、救い主とサモア人への愛から奉仕を行っているという最大5~6人のボランティアの助けを借りて働いている。
このクリニックの診療日(月、火、木、金曜日)は毎日予約でいっぱいになる。毎朝6時頃に予約用の記名用紙をクリニックの外に貼り出すが、時には記名しようと朝4時から待つ人もいる。
「このクリニックのより大きな目的は、サモア政府と協力して、全サモア国民の歯科衛生を向上させることにあります。またサモア人歯科医師の技術を向上させ、そのための訓練を提供する目的もあります。小学生により良い歯科教育を施すために、学校カリキュラムに新たな教材を加えることもできました」とスペンサー医師は語った。
スペンサー医師の妻リンダも、このクリニックで働く専任宣教師であるが、クリニックで治療を受けたある女性について語った。この女性は48日間の旅行中で太平洋の真ん中を航海している最中に歯の冠が取れた。どこに行けば歯科治療を受けられるかを船のクルーに相談したところ、サモアに行けばモルモンの無料歯科クリニックがあるので、そこに到着するまで待つようにとのアドバイスを受けた。
アピアに到着後、この女性は最初に見たタクシーに近づいた。運転手がクリニックについてしているとは思わなかったものの、モルモン歯科クリニックについて何か知っているかを尋ねた。すると、「場所を知っているのでご乗車ください。そこにお連れします」との返事があった。
10分後、この女性はクリニックに到着し、冠はすぐに元の場所に再び接着されたという。
Petero姉妹は治療を受けた後、サモア人に無料で歯科医療を提供している末日聖徒イエス・キリスト教会の気前の良さに感謝の言葉を送った