7月26日金曜日、末日聖徒イエス・キリスト教会は日本語の旧約聖書と新約聖書のデジタル版を、教会の公式ウェブサイトおよび「福音ライブラリー」モバイル・アプリケーションに掲載し、この発表を知らせる公式な通知が神権指導者たちに送られた。これまで、教会の公式サイトやアプリでは聖書を利用することはできなかった。日本聖書協会は、1955年に発行した『口語訳聖書』の利用を認めており、この度のデジタル出版は、その本文を含むが、前書き、脚注、相互参照などの教会特有のコンテンツは含まない。教会公式ウェブサイト上では、以下のリンクからデジタル版聖書にアクセスすることができる。https://www.churchofjesuschrist.org/study/scriptures?lang=jpn
この「デジタル聖書プロジェクト」の始まりは5年前に遡る。2014年にアジア北地域エリアオフィス(管理本部)の翻訳課で勤め始めた森田康貴兄弟が立ち上げたプロジェクトの一つだ。世界の他の地域では四大聖典(聖書、モルモン書、教義と聖約、高価な真珠)のデジタル版が利用可能であったのに対して、日本と韓国では当時使うことはできなかった。森田兄弟は、管理ビショップリックのジェラルド・コセー ビショップが語った次の言葉について深く考えていた。「わたしたちは、英語圏の人々が経験しているのと同等の質の経験を、他の言語を話す人々が得られるように計画しなければならない。」
日本語や韓国語で、中央幹部が話す総大会の説教を研究する時やレッスンの準備をする時などに、末日聖典であれば、説教の中の参照聖句のリンクが機能していたり、ウェブサイトからコピー&ペーストすることもできたが、聖書に対してはそのようなことができず、会員にとって不便だった。このような状況の中で森田兄弟は、アジア北地域でもデジタル版聖書を教会公式サイトやアプリで利用可能にする必要性を感じていた。
1955年に発行された『口語訳聖書』の著作権の保護期間が終了していることが、プロジェクトを進めることに繋がった。日本聖書協会はこれまでに3回『口語訳聖書』を改訂してきたが、差異は比較的小さなものであり、大半は読み替えや現在あまり使われていない不快語の訂正とされている。著作権が切れている1955年版を利用することに、ユタ州ソルトレークシティーにある教会本部聖典部の管理者たちも賛同した。聖典部の依頼を受けて、当時日本を含むアジア北地域全体の翻訳業務を管轄する立場に就いていた森田兄弟が、日本聖書協会から1955年版の聖書を利用することに関しての承諾を得ることとなった。そして、日本聖書協会は、末日聖徒イエス・キリスト教会が1955年版『口語訳聖書』を教会公式ウェブサイトやアプリ上でデジタル化することを承諾した。
しかし、聖書全文のデジタルデータは自分たちで作成する必要があった。特に、教会公式ウェブサイトやアプリで使える形で全ての漢字に振り仮名を付けるための作業は膨大であった。それでも、地域会長会は、青少年などの若い世代、そして宣教師などの日本語を学んでいる人々にとって、振り仮名は必要不可欠だと判断した。振り仮名を入力し、全文のデータが正しいことを確認するために、経験豊富な翻訳者や校正者もプロジェクトに携わった。
このプロジェクトは、教会のアジア北地域で行われていた他の取り組みにも良い影響をもたらした。その一つが、2018年4月に教会の預言者ラッセル・M・ネルソン大管長が発表した新しいミニスタリング(Ministering)の取り組みだ。このMinisteringという言葉を完全に表す日本語の言葉はなく、訳すのが難しい。しかし、森田兄弟と彼のスタッフは、聖書のデジタルデータを活かして、この言葉が四大聖典でどのように訳されているのかを効率的に調べることができた。具体的には、「ミニスター(Minister)」という単語は、旧約聖書に102か所、新約聖書に71か所、モルモン書に60か所登場しており、ミニスタリングの概念を日本語で説明する困難さから、文脈によって様々な言葉に訳されていることがわかった。以下のリンク(https://www.ldschurch.jp/asia-north-area-plan/minister )で視聴できるビデオは、「デジタル聖書プロジェクト」によって入手した情報を基に作成され、聖典や言語の観点から、「ミニスター」という言葉の概念をわかりやすく、視覚的に説明している。
日本語の聖書に加えて、韓国語の聖書も、最近デジタル版で利用可能になった。韓国語の場合は、著作権の保護期間が終了しているものがかなり古く、最新版との差異が日本語に比べて大きいため、教会は、韓国聖書協会に著作権使用料を支払うことによって、現在聖書協会が著作権を保有している最新版を使用している。
日本語と韓国語の聖書をデジタル化し利用可能にすることは、厳密に言えば「翻訳」の仕事ではないが、森田兄弟は重要なことだと捉えていた。彼は、このプロジェクトに関わった職員、業者の方々、教会本部聖典部、そして特に、難題に直面した際に彼を支え続けたアジア北地域会長会に対して、感謝の意を伝えた。また、日本聖書協会の方々と関わる機会に深く感謝した。
このプロジェクトを振り返り、森田兄弟は、「ここ(管理本部)に勤めることになった時、通常の業務をこなすだけでは、自分が来た意味がないと思いました」と語った。「自分がやるべきだと感じたことに携わることができ、感謝しています。」